まちに息づく芸術文化・触れて感じる 感じて楽しむ

生涯学習と「芸術文化」
本市では、「生涯学習」をまちの個性の一つとしています。
市民がいきいきと輝き、健やかで心豊かに暮らすため、まちづくり総合計画や人づくり・まちづくり推進計画にもとづき、「市民の生涯学習」の取り組みをすすめています。
そのうち、芸術文化活動では、舞台芸術・美術・文芸・創作など、多種多様な活動が行われており、そのほとんどは市民が主体となって取り組んでいます。
年間、延べ19万人が市内の文化施設を利用するなど、活動が盛んに行われています。
「つくり手」は市民
芸術文化のジャンルはさまざまです。有形のもの(絵画、版画、工芸ほか)や無形のもの(演劇、舞踊、詩吟、音楽ほか)、芸道(茶道、華道ほか)など、幅広く存在しています。
市内で活動している芸術文化のサークル・団体は100以上あり、2,000人ほどが活発な活動に取り組んでいます。
毎年開催される「市民総合文化祭」では、市民の手によってつくられた珠玉の作品が並び、日頃の活動の成果が発表されます。
市では、広く芸術文化に触れる機会をつくったり、自主的に活動する方への支援を行っているほか、「生涯学習インストラクター」による相談も受け付けています。
芸術文化を育てる「舞藝舎(ぶげいしゃ)」の取り組み
2019年度設立の一般社団法人「舞藝舎(ぶげいしゃ)」では、あさひサンライズホールの運営と市民文化センターの舞台技術業務を行っています。
あさひサンライズホールを拠点とし、舞台芸術公演の企画・実施やコンサルティング、人材育成、施設の管理運営、舞台芸術を活用した地域振興、芸術文化活動の振興などに取り組んでいます。
代表には、長年にわたり芸術文化活動に携わってきた安川登志男さん、あさひサンライズホール館長には、オープン当時からホールを支えてきた漢幸雄さんが就いています。
演劇やコンサート、寄席をはじめ、朝日地区の文化祭・芸能発表も実施しています。
市の芸術文化振興や舞藝舎の展望についてお話をうかがいました
芸術文化を日常のなかに(一般社団法人舞藝舎 理事長 安川 登志男 さん)

舞藝舎を設立した経緯は
芸術文化の公演をはじめとするホールの運営には、音響や照明、舞台制作などの専門的な知識や技術が必要でありながら、その習得には多くの経験と時間を要します。
そのため、職員の人事異動がある市の直営では技術習得が難しく、「市民文化センター」と「あさひサンライズホール」の運営を専門に任せる必要があると強く感じていました。
また、さまざまな公演活動を、業務としてだけではなく、深い思い入れをもって取り組むことが、芸術文化に携わる人たちとの深いつながりを生み出すため、行政の枠にとどまらない組織が必要だと考えていました。
出演者として今の芸術をどう感じているか
私がまだ学生だった昭和30年代は、ホール会場はなかったものの、地域の青年や学生など担い手は多くいました。
昭和38年に旧市民会館が建てられた当時、クラシックやジャズ、オーケストラなどの演奏が毎週行われていました。また、太鼓や合唱、演劇などの団体も多くつくられ、ほかのまちよりも活動が盛んでした。
私が初めて、士別で公演を行ったのは昭和49年でした。はじめの3〜4年は、客席が2割程度しか埋まらず、苦い思いをしたこともありました。しかし、出演者が増えれば観客も増えることに気づき、さまざまな世代が出演する内容を考えるようになりました。
特に、子どもが出演する際には、家族や親族がそろって子どもの雄姿を見に来ます。「子どもミュージカル」を上演したときは、会場が満席になるほどでした。
現在、芸術文化のなり手は高齢者が多い状況です。これまで積み重ねてきた知識と経験を受け継ぐ、若い世代の担い手も必要となっています。
また、観客も、高齢者や女性の割合が増えていることから、これまでの「夜公演」から「昼公演」中心に変えていく必要が出てきています。
コロナ禍の影響もあり、若い世代は、演劇や演奏をインターネットの動画配信で初めて見ることが多いと聞きます。
インターネットは拡散性が高く、より幅広い層に興味を持ってもらうにはよいツールですが、会場の熱を感じたり、観客同士が感動を共有することができません。
この魅力を伝えるためには、インターネット視聴ではなく、会場に足を運んでもらう工夫が必要です。
今後の士別の芸術文化振興についてどのように考えているか
―壁画家の松井エイコさんや、版画家の小林敬生さん、小池暢子さんなど、士別に特別な思いをもって活動されている芸術家は数多くいます。
また、「しべつアーティスト・イン・レジデンス」では、彫刻や版画などの若手芸術家が、士別をテーマに制作を行いました。
舞台芸術でも、これまでプロの脚本家や役者を数多く招いており、士別で練習を重ね舞台を練り上げて、全国公演に旅立っています。
ジャンルやプロ・アマを問わず、多くの芸術家がこの地で作品を練り上げて創造する、そんなまちであり続けたいと思います。
士別市民は、このような芸術家が身近にいることで、日常的に演劇や演奏などに触れることができ、自らも参加することができます。
今後も、そのような機会が保たれるよう、芸術文化に取り組んでいきます。
芸術は人生を豊かにする(一般社団法人舞藝舎理事兼あさひサンライズホール館長 漢 幸雄 さん)
施設運営者として芸術文化をどう考えているか
歌わなくても、演じなくても、描かなくても、人は死ぬことはありません。しかし、豊かな人生を考えたとき、文化・芸術はさらなる豊かさを与えてくれると考えています。
自分の気持ちを周囲に伝えたり、表現したりすることは、感情と言語をもった「人間」という生き物の本能です。
社会のなかで、行政の仕事は多岐にわたりますが、大切なのはバランスです。
まちの特性を踏まえたうえで、さまざまな政策のバランスを取り、特性をどう生かしていくかが行政の役割です。
そのなかで、積極的に文化・芸術振興に取り組み、市民にとって触れてみよう、やってみようと思える機会が多いほうが、幸せの感じられるまちといえるのではないでしょうか。
舞台制作における市民参加の意義をどう考えているか
あさひサンライズホールで20年近く継続している「市民参加劇」では、これまでに約500人がキャスト、スタッフとして関わっています。なかには、演劇にまったく興味がなくても、裏方として舞台美術制作に参加したり、衣装制作に参加したりす
る人もいました。
みんなが同じ方向を向いて、ひとつの作品をつくることは、とても特別な経験となります。そこには、社会的な立場や世代、利害関係などは存在しません。
だからこそ、だれもが輝ける場所であり、市民にとって特別な場所になりうるのだと思います。
舞台は、そういった記憶を積み重ねるための道具であり、模範解答のない「文化・芸術」が豊かな人生につながる理由だと考えています。
今後どのような事業に取り組んでいきたいか
―劇場やホールをもっと身近に感じてもらうために、普段は入れない場所を見学できたり、施設全体を使って遊べる「劇場祭」のようなものを考えています。
また、あさひサンライズホールのさらなる有効活用を模索し、利便性を高めていくことも必要です。
文化・芸術に取り組む施設の運営では、「こうすれば正解」といったものはありません。今後も、まちの「人づくり」を担う一翼として文化・芸術に取り組んでいきます。
この記事に関するお問い合わせ先
教育委員会生涯学習部 地域文化課 地域文化係
電話番号 0165-28-2121
更新日:2023年02月15日