市民を支える医療の拠点~士別市立病院の役割と取り組み~

公立病院は地域に不可欠

公立病院は、自治体が運営する医療機関です。
民間医療機関との大きな違いは、救急や小児、精神医療といった採算性が難しい医療であっても、地域に不可欠な役割を担い、市民の命と健康を守ることを優先して運営している点です。
一方で、赤字を容認する経営では病院を維持し続けることはできないため、持続可能な形で地域医療を提供できる運営を行う必要があります。
事実、日本の公立病院は多くが苦境に立たされており、経営難により公立病院を失った自治体も少なくありません。
本市の市立病院も、他地域と同様に厳しい状況が続いているため、病院機能の見直しや広域連携による役割分担、入院機能の効率化などをすすめ、持続可能な経営に向けた取り組みをすすめています。
市立病院の現在の病棟
現在、市立病院の病棟には合計129床の病床があり、利用者の病状や回復段階に応じて運用しています。
一般病床(50床)

急な病気やけがなど、入院による治療が必要な患者さん
地域包括ケア病床(39床)

急性期の治療後、在宅復帰などに向けて治療・リハビリが必要な患者さん
療養病床(40床)

長期的な療養や、継続した医療が必要な患者さん
市立病院の課題と対策
厳しい経営状況が続く現状
現在、市立病院の経営は正念場を迎えています。
年度末資金残高をみると、回復期・慢性期中心の医療体制に移行してから地道に改善してきた経営状況が、2022年以降急激に悪化していることが分かります。
2025年度には、運営に必要な資金の確保が難しくなり、国の貸付制度である「病院事業債」で4.1億円を借り入れて赤字決算を回避しましたが、これがなければ資金残高はマイナス2.9億円でした。
市立病院の年度末資金残高グラフ
この背景には、物価高騰による医業費用・人件費の増加のほか、患者数の減少も影響しています。このほか、医師の勤務体制の変更なども影響していると考えられますが、地域の人口が減少しているなかでも、24時間の救急受入の体制などを維持していることが大きな要因です。
外来・入院患者数の推移
改善に向けて何をするか
市立病院をこれからも維持していくためには、さまざまな面で対策をすすめていく必要があります。
現在の医療提供体制、病院運営の見直しをはじめ、物価高騰への対策として、限られた医療資源を有効かつ効率的に活用していくことも必要です。
また、職員一人ひとりが現在の市立病院の現状や課題を理解し、職員同士で共有することで、病院全体で一丸となって考えていかなければなりません。
同時に、市民の理解や信頼を高め、安心して病院に来てもらうためにも、市民に対ししっかりと情報発信していくことも重要です。
不退転!市立病院復活への道
1 全職員で経営改善に取り組む!
- 中核となる「経営強化本部」を設置
- 病院全体で課題を共有
- 全職員が一丸となって改善
2 患者さんの声を聞く!
- 満足度アンケートの実施
- 患者満足度(接遇の向上)を重点目標の一つに
- 患者さんの声をサービス向上につなげる
3 職員からの提案も聞く!
- 経営改善につながる提案を募集
- 改善につながるアイデアを活用
- 職員一人ひとりの視点を経営改善に生かす
4 多角的視点で経営を見直す!
- 情報発信の強化、ICTの活用、健診の充実、業務の見直し…できることはたくさんある!
岩野 博俊 院長に聞く 市立病院のコト
岩野 博俊 院長
福岡県北九州市出身。山口大学医学部附属病院や昭和大学横浜市北部病院などを経て2016年8月に士別市立病院の消化器内科医師、内視鏡センター所長に着任。胆道・すい臓疾患治療を専門に内科全般を担い、2024年から副院長、2025年から院長。
今回、着任して約1年半が経過する岩野博俊事業管理者兼院長に、現在の市立病院の取り組みや今後の方向性、院長が注力する「エンドオブライフケア」について、お話をうかがいました。
まずは「信頼される病院づくり」から
現在、市民の皆さんから信頼される病院となるべく、職員一丸でさまざまな取り組みをすすめています。
昨年実施した市民アンケートでは、多くのご意見をいただきました。回答結果をみると、9割以上の市民が市立病院の利用経験があり、ライフライン機能を果たしているといえますが、同時に「産科機能の設置」「小児科機能の充実」などを求める声もあり、市外へ転院するケースでは「士別は頼りない」という声もありました。
病院としては、皆さんが求める声にはできるだけ応えていきたいと考えています。ただ、すべてに応えることは人員的にも経営的にも限界があります。市民の命と健康を守る地域医療の拠点として、赤字でも無くしてはいけない部門もあります。そのなかで、市民の要望にどう応えていくか、どうやって信頼を得るかを考えています。
今年6月に実施した満足度アンケートでは、おおむね好評の意見が得られましたが、接遇面で「対応が冷たい」「威圧的」「説明不足」といった医師・看護師に対する不満点も浮き彫りになりました。
ここでしか勤務経験がない職員もいるなか、同じ場所で長く働いていると「ここのやり方が当たり前」になり、こちらに合わせるよう患者さんに求めてしまうことがあります。決してそうではないことを理解し、直せる部分は直していこうという思いで、現在職員研修なども含めて改善に取り組んでいるところです。
一方内部では、職員の年齢構成の変化や、マンパワーの不足が課題となっています。接遇改善と同様に職場の改善にも取り組み、職員を大切にする働きやすい環境づくりもすすめます。
「広域連携」は生存戦略
公的医療機関の院長や管理者で集まる機会がありますが、どこも危機感をもっています。個々の機関ではなく、道北一体で考えないと地域医療そのものが立ち行かなくなる、という意識が強くあります。
そのためには、広域医療圏を踏まえた役割分担をすすめていく必要があり、現在の士別は「慢性期医療」へと舵を切っています。急性期医療に関しては、その一部を近隣の名寄などにお願いしていますが、一方で術後のリハビリやアフターケア期間を士別で受け持つ、といった住み分けをすすめています。
国全体で人口減少がすすむなか、医師や看護師、技師だけでなく患者数も減ってきています。それでも市立病院は地域に必要不可欠な場所です。広域連携による役割分担は、地域に病院を残す重要策のひとつであり、市民の皆さんにもご理解いただきたいと思っています。
エンドオブライフケアの実践
エンドオブライフケアは、人生の最終段階といえる終末期医療の現場において、患者さんの願いや思いを大切にし、尊厳を守るという考え方です。
たとえば、固形物を食べると誤嚥してしまい、ムース状にした食事しか口にできない患者さんが「誤嚥しても構わないから、おいしいお米をもう一度食べたい」と言ったら。
医療的な『正しさ』だけを考えれば、当然この願いは聞き入れられませんし、これまでの医療現場ではそれが当たり前でした。しかし、医療的正しさを理由に患者さんの意思をないがしろにすることは、果たして患者さんのためでしょうか。
エンドオブライフケアでは、このような場合に「患者さんの意思を奪う」のではなく「患者さんの意思を尊重しながらできる方法はないか」を考えることが重要です。現在、さまざまなケースを想定して、こういった場合はどうすべきか、何ができるかを考える意思決定支援委員会や臨床倫理コンサルチームをつくり、この課題に向き合っています。
立場や考え方が違えば結論も異なるため、これはとても難しい問題で、そして正解もありません。患者さんのこれまでの人生や思考、患者さんが考える残された時間の使い方などを考慮し、最期の時間を豊かに過ごしてもらうためにどういったケアができるか考えていきたいです。
市民の声を聞いてみよう!

今年6月に、患者さんを対象に「患者満足度アンケート調査」を実施しました。
医師、看護師・助手、薬剤師、放射線技師など職種別で職員対応の満足度を調査した結果、すべての職種で満足度が90%以上となりましたが、具体的な不満点も判明しました。
そのほか、くわしい結果などは下記のリンクをご確認ください。
これからも必要とされる病院へ
めざす姿「患者さん中心の医療と、地域から信頼される病院づくり」
地域に必要な医療を将来にわたって提供するため、経営の改善と安定した医療機能の提供を一体的に推進します。

病院を支える「市立病院応援隊」との絆
市立病院応援隊は、2012年4月、本市の医療の中核を担う市立病院の存続を願い、市民有志によって設立された組織です。
『市民の手で病院を支える』をモットーに、病院の広報活動や環境整備、医療従事者確保に向けた活動、公開講座への支援など、長年にわたり多方面でサポートをいただいています。応援隊の活動は、病院職員にとって大きな心の支えにもなっています。
広報紙でも掲載しています

本ページの内容は、広報しべつ令和8年10月号にも掲載しています。
市内各所で配付している紙面のほか、本ホームページでも閲覧できます。
より詳細な内容となっていますので、興味のある方は、下記ページからご覧ください。
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更新日:2026年10月29日