○士別市子どもの権利に関する条例
平成25年2月22日
条例第11号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 子どもにとって大切な権利(第4条―第8条)
第3章 子どもの権利を保障する大人の責務(第9条―第13条)
第4章 子どもに関する施策の推進(第14条―第20条)
第5章 子どもの権利の保障状況の検証(第21条・第22条)
附則
子どもは、社会の一員として仲間や大人とともに、よりよい未来をつくっていくことができる地域の宝です。
士別市の子どもたちは、自分たちの権利のことをわかってほしいという願いから、次のように考えています。
私たちは、子どもの権利や参加の機会を保障し、子どもにやさしいまちづくりを進めます。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)、士別市まちづくり基本条例(平成24年士別市条例第1号)の理念に基づいて、基本的人権としての子どもの権利を保障し、子どもがいきいきと育つことを地域全体で支え合う仕組みを定めることにより、子どもとともに、子どもにやさしいまちづくりを進めることを目的とします。
(定義)
第2条 この条例におけることばの意味は、次のとおりです。
(1) 子ども 18歳未満の人(18歳に達し、20歳に満たない高校生を含む。)で市内に居住する人、通学する人、通勤する人
(2) 保護者 親及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)に定める里親、その他親に代わり子どもを養育する人
(3) 育ち学ぶ施設 児童福祉法、学校教育法(昭和22年法律第26号)、社会教育法(昭和24年法律第207号)などに定める保育園、児童館、幼稚園、学校、図書館、博物館、公民館など子どもが育ち、学ぶために利用する施設
(4) 市 市長を代表とする執行機関、教育委員会
(基本的な考え方)
第3条 私たちは、子どもの権利を保障し、子どもにやさしいまちづくりを進めるため、次の考え方に基づいて行動します。
(1) 子どもの最善の利益を第一に考えること。
(2) 子ども一人ひとりを権利の主体として尊重すること。
(3) 子どもの生きるよろこびを育むため、その気持ちや考え、行動する力を大切にすること。
(4) 子どもの年齢や発達に応じた支援をすること。
(5) 子どもと大人の信頼関係を基本に、地域全体で子どもにやさしいまちづくりを推進すること。
第2章 子どもにとって大切な権利
(子どもの大切な権利)
第4条 この章に定める権利は、子ども本来の個性や能力の健やかな成長のために、特に大切な権利として保障されます。
2 子どもは、その年齢や発達に応じ、社会の一員であることを自覚し、自分の権利が尊重されるのと同じように、他人の権利を尊重するよう努めます。
(安心して生きる権利)
第5条 子どもは、健やかに安心して生きるために、次のことが保障されます。
(1) 命が守られ、かけがえのない存在として大切にされること。
(2) あらゆるいじめや差別、暴力を受けず、放任されないこと。
(3) 愛情と理解をもって育まれること。
(4) 健康に配慮され、適切な医療が受けられること。
(5) 平和で安全な環境の下で生活できること。
(ゆたかに育つ権利)
第6条 子どもは、いろいろな経験を通してゆたかに育つために、次のことが保障されます。
(1) 学び、遊び、休息すること。
(2) 自然や文化、芸術、スポーツに親しむこと。
(3) 生活習慣を学び、成長に応じた主体性を身につけること。
(4) 必要な情報を手に入れたり、利用したりできること。
(5) 主体性が育まれる居場所が確保されること。
(自分を守り、守られる権利)
第7条 子どもは、自分を守り、守られるために、次のことが保障されます。
(1) あらゆる権利の侵害から守られること。
(2) 成長が阻害される状況から保護されること。
(3) プライバシーが守られ、誇りを傷つけられないこと。
(4) 子どもであることをもって不当な扱いを受けないこと。
(意見表明や参加する権利)
第8条 子どもは、自ら社会に参加するために、次のことが保障されます。
(1) 自分の意見や考えを表明する機会が大切にされ、その意見や考えが尊重されること。
(2) 仲間をつくり、仲間と集うこと。
(3) 社会に参画し、意見が活かされる機会があること。
(4) 社会参加について、適切な支援を受けられること。
第3章 子どもの権利を保障する大人の責務
(大人の責務)
第9条 大人は、子どもが生きるよろこびを感じられるよう、第3条に定める基本的な考え方に基づき、子どもにとって大切な権利を保障しなければなりません。
2 大人は、子どもが自分の権利について理解し、自分を大切にすることや自分以外の人を大切にするゆたかな価値観をもつ人間になることができるよう支援しなければなりません。
(保護者の責務)
第10条 保護者は、子どもの養育や発達について、最も重要な責任をもつべき存在であることを自覚し、子どもにとって最善の利益は何かを考えて、次のことに取り組まなければなりません。
(1) 子どもが心ゆたかに育つため、子どもの年齢や発達に応じた支援や助言をすること。
(2) 子どもと向き合い、子どもの気持ちや考えを受け止め、十分に話し合うこと。
(3) 子どもが家庭で安心して過ごせる環境を整えること。
(育ち学ぶ施設関係者の責務)
第11条 育ち学ぶ施設の関係者は、子どもの福祉や教育に携わる人として、次のことに取り組まなければなりません。
(1) 子どもにとって最善の環境や学びとは何かということに常に気を配りながら、子どもの活動の充実を図ること。
(2) 子どもの気持ちや考えを受け止め、話し合い、子どもが意思決定に参加できる機会を設けること。
(3) 虐待やいじめの予防と早期発見に努めること。
(4) 子どもの権利を理解し、保障するため、研さんに努めること。
(地域住民の責務)
第12条 地域住民は、子どもとともに生活する地域社会の構成員として地域力を発揮し、次のことに取り組まなければなりません。
(1) 子どもを地域社会の一員として認め、あたたかく見守ること。
(2) 子どもの気持ちや考えを大切にし、対話の機会をつくること。
(3) 子どもが心ゆたかに育つため、地域の行事や活動に参加する機会を設けること。
(4) 子どもの権利を理解し、保障するために、住民意識の高揚に努めること。
2 事業者は、事業活動の中で、子どもが健やかに育つことができるための支援をするとともに、従業員が子育てしやすいよう職場の環境づくりに配慮すること。
(市の責務)
第13条 市は、子どもの権利を保障するため、保護者、育ち学ぶ施設の関係者や地域住民と連携・協力し、子どもに関する施策を実施します。
2 市は、保護者、育ち学ぶ施設の関係者や地域住民が、それぞれの責任を果たすことができるよう必要な支援をします。
第4章 子どもに関する施策の推進
(施策の考え方)
第14条 市は、子どもの権利が保障され、それが活かされるまちが、市民にとってもやさしいまちであるという考えに基づいて、まちづくりを進めます。
2 市は、子どもが市に対してもつ考えや思いを反映させる機会をつくります。
3 市は、育ち学ぶ施設や子どもが利用する施設などで、子どもの意見が活かされるよう、子どもが参加する機会をつくります。
(子どもの権利の周知と学習支援)
第15条 市は、子どもの権利に関する理解を深め、関心を高めるための広報活動を行います。
2 市は、保護者、育ち学ぶ施設の関係者や地域住民等が、子どもの権利について学び、お互いの権利を尊重し合うことができるよう必要な支援をします。
(子育て家庭への支援)
第16条 市は、保護者が子どもの養育や発達に関する最も重要な責任を果たすことにより、子どもが安心して生活することができるよう、保護者、育ち学ぶ施設の関係者や地域住民等と連携・協力し、子育て家庭を支援するネットワークづくりを進めるなど、子育て家庭への支援を行います。
(育ちを支える居場所づくり)
第17条 市、保護者、育ち学ぶ施設の関係者や地域住民は、子どもが安心して仲間と集い、自主的な活動ができる居場所づくりを進めます。
2 市、保護者、育ち学ぶ施設の関係者や地域住民は、子どもが自然との触れ合いやさまざまな体験をしたり、異なった世代の人々と交流したりする機会を提供し、ゆたかな自己の育ちを支援します。
(意見表明や参加の促進)
第18条 市は、子どもがまちづくりなど市の政策に意見を表明し、参加する機会を提供します。
2 市は、子どもが地域における活動に参加する機会を促進するよう、その方策を普及します。
3 育ち学ぶ施設の関係者は、施設の行事、運営等について、子ども、保護者などの参加を促し、意見を述べる機会を提供します。
4 育ち学ぶ施設の関係者は、子どもの意見表明や参加を推進するために、子どもが主体的に活動できるよう支援します。
(子どもに関する行動計画)
第19条 市は、子どもにやさしいまちづくりを総合的かつ計画的に進めるため、子どもに関する行動計画(以下「行動計画」といいます。)を策定し、必要に応じて、その内容を見直します。
(子どもの権利侵害に関する相談、救済)
第20条 市は、子どもが虐待、体罰、いじめなどの権利侵害を受けた場合に、子どもの健やかな成長を支援するため、関係機関と連携を図りながら、安心して相談や救済を求めることができる体制を整備します。
第5章 子どもの権利の保障状況の検証
(子どもの権利委員会)
第21条 市は、この条例に基づく施策の実施状況を検証し、子どもの権利を保障するために、士別市子どもの権利委員会(以下「権利委員会」といいます。)を設けます。
2 権利委員会は、10人以内の委員で組織します。
3 委員は、人権、福祉、教育などの子どもの権利に関わる分野において識見を有する者、関係団体の職員、公募による市民などの中から市長が委嘱します。
4 委員の任期は、2年とし、再任することができます。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とします。
(権利委員会の職務)
第22条 権利委員会は、市長から意見を求められたときや必要があると自ら判断したときは、子どもの権利の状況について調査や審議を行います。
2 権利委員会は、前項の審議にあたっては、広く市民に意見を求めることができます。
附則
この条例は、平成25年4月1日から施行します。